kirdina’s(裏)自転車秘密工房

「ordinaM3を買ってみたブログ」の作者による秘密の自転車工房です。濃い部分だけ抽出してみました。

自転車事故を防ぐための対策と道路管理者の維持管理責任 ~2020.11.03「つくば霞ヶ浦りんりんロード自転車集団転倒事故」について考える~

 2020年11月3日午前10時頃、茨城県土浦市のサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」において、自転車の転倒多重事故がありました。

 お怪我をされた皆様のお早い回復を心より願い、お祈り申し上げます

 

 報道によれば、自転車ツーリング仲間13名が走行中、1台がスリップして転倒。これに伴い後続など計8台が転倒し、8名の負傷者が出た…とのこと。(後の報道で負傷は9名となりました。)

 

ameblo.jp

 

  この事故に関して、続報がありましたので、ご紹介するとともに、私の意見も書き添えておきたいと思ったわけであります。

■もくじ:

 続報記事とその内容:

 さて、その続報記事がこちら。

www.yomiuri.co.jp

 

f:id:kirdina:20201224101831j:plain

読売新聞の記事の画像キャプチャ

 

f:id:kirdina:20201224121243j:plain

読売新聞の記事から拝借した事故状況の図



 

 ぜひとも皆さんでリンク先をお読みいただきたいと思いますが、私なりに報道記事の要点をまとめると、こんな感じ?

事故原因とその責任:

 まずは、事故当事者が主張している事故原因とその責任について。

  1. 事故当事者は、「転倒事故の原因は”路面のぬめり”である」…と主張している。
  2. 事故当事者は、「この”路面のぬめり”を放置していたのは、茨城県の道路管理上のミスであることは明らかだ」…と主張している。

事故状況の内部調査結果:

 次に、このサイクリンググループ自身による事故状況の内部調査について。

  1. 走行グループは13名。縦に並び、小班構成は「4+6+2+1」…といった状態だったらしい。
  2. 先頭グループ4台(①②③④)はサイクリングロードの中央を、第二グループの6台(⑤⑥⑦⑧⑨⑩)、第三グループ(⑪⑫)の2台は左側を走行していた。最後の車両(⑬)はグループから離れて走行していた。
  3. 12名は各自2メートル以上の車間距離を保って走行していた。
  4. 先頭グループ4台(①②③④)は、直後に事故現場となる場所を無事に通過した。
  5. その後、第二グループの先頭(⑤)が転倒した。
  6. これに伴い、その後続(⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫)がこれを避けようとして次々に転倒。なお、追突はしていない。
  7. 後ろの事故に気付いた④はブレーキをかけて転倒。
  8. 最後尾の⑬は事故に巻き込まれることはなかった。

 

 …さて、皆様、どのように思われたでしょうか?

 

少なくともこの記事を読む限り、この事故当事者の主張は通らないのではないか?事故を防ぐための事故当事者の注意が不十分だったといえるのではないか?…という意見を私は持ちました:

 私はこれら報道からしか情報を知りえない立場ですので事実認識等に不十分な部分がある可能性があることは致し方ないところ。その点はご容赦いただくとともに、そのような立場から書かれたブログであることを十分念頭において、続きをお読みいただけたらと思います。

 

 そのうえで、あえてこの報道を読んだところの感想、意見を言わせていただくなら、

「この事故当事者の皆さんの主張は通らないのではないか?」

「この事故当事者の皆さんの事故防止のための注意は不十分だったのではないか?」

…という感じです。

 

事故責任はだれに?道路管理者の責任はどこまで?:

 今回の事故当事者さんは、「道路上の”ぬめり”を放置していた茨城県の管理責任上のミスは明らかだ」…という趣旨の主張をされているようです。

 しかし、国や市町村の管理する道路は膨大です。その全ての道路に関して、24時間、365日、常に万全完璧な状態を維持することを求めるのは、無茶無理難題というものではないでしょうか。

 

 巨大な陥没や土砂崩れなどであれば早急に対応すべきなのは当然ですが、例えば「こぶし大の陥没*1「幅数センチ程度の道路のひび割れ」…といった程度のものであれば、その数の多さなどを考えれば、ある程度の期間放置されていたとしても仕方ないと思うのです。ましてや、「道路に積もったぬれ落ち葉」「路面の凍結」「路面に積もった砂礫」…といったものですと、国や地方自治体に処理していただけるのは嬉しいですけど、基本的には道路利用者自身が注意すべきという部分も大きいと思うのです。

 

 今回の「路面のぬめり」…についても、もちろん茨城県に管理していただけるのは嬉しいですけど、基本的にサイクリストは常に前方路面に注意して走行すべきであり、自分自身の技能や装備に照らして危険だと判断したなら自転車による走行を断念して徒歩で通過するなどの対策をとるべきだったように思います。

 結果的に転倒事故を引き起こしている以上、この点について事故当事者側に落ち度があったことは明らかでしょう。

 

 そんなわけで、事故原因とその責任について、私はこう思いましたけど、いかがでしょうか?

  • 事故原因は”路面のぬめり”と、”その危険を察知して適切な対応を取れなかった事故当事者の判断ミス”にある。
  • 本件事故の責任は、事故を防止するための適切な対応ができなかった事故当事者自身によるところが非常に大きい。
  • 茨城県に対して、この”路面のぬめり”を含め全線において万全完璧な走行環境を常に維持することを要求して事故責任を負わせることは、誠に酷である。

 

今回の事故当事者にみる事故防止のための対策:

 今回の報道にある事故状況の内部調査から見えてきた事故当事者の事故防止対策の適否について、ちょっと考えてみたいと思います。

 

車間距離は十分だったのか?:

 今回、この事故グループの内部調査によれば、「各車時速20km台で、各2メートル以上の車間距離をとっていた」…とのことです。これは十分な事故防止対策だったのでしょうか?*2

 

 素直にその結末を見れば明らかです。今回、後続車両(⑥~⑫)は前方で発生した転倒事故に対応してこれを安全に回避することができませんでした。それはつまり、時速20km台で車間距離2メートルというのは彼らにとって安全上不十分だった…ということに他なりません。

 最初の車両の転倒原因が”路面のぬめり”ではなく、例えば脇見運転、スマホながら運転などであったとしても、とにかく何等かの形で転倒事故が発生すれば、後続車両は同じように転倒したに違いありません。

 したがって、最初の車両(⑤)の転倒原因が何であったとしても、後続車両等の転倒の原因は安全な速度・車間距離をとっていなかった各自にあると言わざるを得ないと思います。

 実際に、最後尾で十分な距離をとって走行していた車両(⑬)は事故に巻き込まれなかったことが、この事実を如実に証明しております。 車両⑤に連なる後続車両うち、しっかり安全に配慮して走行していたのは最後尾⑬だけ…ということですね。

 まあ、因果関係については色々微妙で難しい点はありますけどね。

ja.wikipedia.org

 

 なお、後続の事故に気付いてブレーキをかけた車両④については、もはや言及するにも値しないのではないでしょうか。これ単なる単独事故ですよね。茨城県に責任を問うなどお笑い種に思えます。

 

グループライドにおける安全な速度・車間距離とは:

 では、グループライドにおける安全な速度・車間距離はどの程度なのでしょうか?

 これは一概に数値で示すことはできないと考えます。各自の技量、装備、気象条件、路面環境など、様々な要因で変わってくるでしょう。各グループの構成員それぞれが現場で判断する以外に方法はありません。「2メートルならOK」とか「50cmは危険」とか、そういう問題じゃないですよね。

 そして、その判断ミスの責任を道路管理者に転嫁するなどといったことは、絶対にあってはなりません。

 

 私なりの今回の事故原因まとめ:

  • 車両④:単なる単独事故。自己責任。
  • 車両⑤:前方路面の”ぬめり”に気付き、自分自身の技能や車両装備を考慮して、必要な安全措置をとることができなかった。自己責任。
  • 車両⑥から⑫:グループライドにおいて安全に配慮した十分な速度・車間距離をとっていなかった。自己責任。

 …と、私でしたらこう考えますけど、いかがでしょうか? 茨城県に管理責任を問うことは、あまりに酷と思う私です。そこが自分にとって安全に走れる場所なのかどうか、…ちゃんと自分で判断して、その判断結果に責任を持ちましょうよ。

 

結語・ この事件が社会に与える影響を私は懸念してしまいます:

 さて、事故原因やその責任の所在についてどうなるのか、注視していきたいと思っておりますが、私が懸念するのはこのような報道が社会に与える影響です。

 

 現在、新型コロナウイルス禍が結果的に追い風となるような形もあり、交通における自転車の有用性が世界的に見直されているところです。また、ここ数年、日本においても各地でサイクリングロードを整備するなどの動きが出てきているところでもあります。

 そんな社会環境下で起きた今回の事故。もしもこの事故によって茨城県の道路管理責任が厳しく追及されるような事態となれば、他の地方自治体のサイクリング環境整備事業に水を差すようなことにならないか…、私はそれが一番心配です。

 

 そのようなわけで、今回、事故に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げるところではありますが、自分たちの安全対策に不十分な点があったことを素直に認め、茨城県の責任を問うなどといった主張は留めて、安全に配慮したより良いサイクリング環境の整備のためにサイクリストとして協力していく姿勢を示していただけることを、心よりお願いしたいと思っているところです。

 

 日本のサイクリング文化はまだまだ未熟で始まったばかり。国や地方自治体がサイクリング関連整備事業にかけることのできる予算も限られています。そんな状況で運営されているサイクリングロードなのですから、万全完璧など期待してはならないと思うのです。もしもサイクリングロードが万全完璧でなければならないとしたなら、今後、サイクリングロードが作られることは無いでしょう。それはとても残念なことです。そのような社会事情を私たちサイクリストはしっかり認識して、なけなしの予算で整備されたサイクリングロードを「ありがたく使わせていただく」という態度で、その不完全な点は私たちサイクリストが運用で補うくらいの気構えで、事故に十分注意して走りたいものだと思います。

 

 

 

*1:こぶし大の陥没:雪国の春の道路にはよくあります。

*2:車間距離2メートル?:これは内部の聞き取り調査の結果ですから、本当に現場で実際に2メートルの車間距離をとっていたかどうか、それは不明です。しかし、一般的なグループライドにおいて、2メートルも車間距離をとっていない例は非常に多いような気がしますけどね。