「路側帯」について正しく表現されていないネット記事をまた見つけてしまいましたので、不本意ながら書かせていただきます。「路側帯は事実上の歩道」ですよ!自転車は車道を走るのが原則です。ね?Forbes JAPANさん?
「路側帯」
その意味、ちゃんと理解している人って、意外と少ないんじゃないかと思うのです。ちょっと前にも同じようなネタを書きましたけど、
また勘違いしたまま情報発信しているネットメディアを見つけてしまったのであります。これね。
こういうのイチイチ取り上げて記事にするのって、何だか揚げ足取りみたいで私もあまり気分良くないのですけど、でも間違った情報があたかも正しいかのように流布されるのはやっぱり世の中的に宜しくないと思うものですから、今回も誤りを指摘して記事を書かせていただきます。*1
■もくじ:
トンチンカンな見出し:
さて、自転車について、別に全然新しくも何ともない”6つの新常識”をテーマに書かれたこの記事。
その中で、私が誤りを指摘したいと思うのは、「常識05」とタイトルされた記事。
そのタイトルは、
「常識05:車道走行は左側の路側帯を走る」
はい、この点について道路交通法を正しく理解されている方でしたら、きっと爆笑された…かも?(笑)
本質的におかしいですよね、このタイトル!?
例えていうなら、「ケーキを食べるときはマグロから食べる」…くらいにトンチンカンなタイトルだと思うのですけど?
路側帯と路側帯に関する法改正:
路側帯については2013年に法改正がありまして、当時、私も気になったものですから、調べて記事にしたことがあります。
路側帯とは何か:
路側帯とは、簡単に言いますと、「歩道の代わり」です。
もうちょっと難しく言いますと、
- 歩行者の通行の用に供し、または車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路または道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によって区画されたもの。
…ということです。注意したいのは、「歩道が無い道路にあるのが路側帯」…ということです。そして、路側帯は歩行者のためのもの…つまり実質的な歩道です。
コピペですみません(笑)。
歩道のない道路で自転車はどこを走るべきか:
歩道の有無に関わらず、自転車は車道の左側を走るというのが原則です。
これで、はい終了!
…と、まあ、そういうことなので、路側帯がどうとか関係ありません。ましてや「車道走行は左側の路側帯を走る」…なんてことは、あり得ません。車道走行なのですから、車道を走りましょう(笑)。路側帯は歩道に準じた歩行者のための場所、即ち事実上の歩道なのですから、当たり前です。
路側帯に関する法改正の経緯:
しかし、歩道のある道路で自転車が歩道を走行することが認められている場合があるのと同様に、歩道のない道路で自転車が路側帯を走ることが認められる場合もあります。
2013年改正以前には、「路側帯は歩道」…という原則論をあくまでも貫いていましたので、自転車で路側帯を走る場合には、歩道を走る場合と同様に、道路の左右どちらの路側帯を走るのもOKでした。しかし、これでは事実上の逆走を認めてしまうような事態となってしまい危険だ!…という指摘があったそうです。
そこで2013年12月1日から施行された改正道路交通法では、「自転車は道路右側の路側帯を走行してはならない」…として、事実上の逆走状態を解消しようとした…ということと理解しております。
つまり、「例外の例外」…という位置づけですね。論理構造としては、たぶんこんな感じです。
(原則)自転車は車道の左側を走る。
(例外)自転車は歩道や路側帯を走ってもよい場合がある。
(例外の例外)自転車は右側の路側帯を走ってはならない。
…どうでしょ? どう考えても、「車道走行は左側の路側帯を走る」…なんてことはあり得ません。っていうか、論理矛盾も甚だしい(笑)。
たとえ取材を受けた方が正しく答えていたとしても、その記事を書いた人が無知蒙昧だとトンチンカンな記事が出来上がる:
この記事の取材元ネタは、あの有名自転車チェーン店「Y's Road」のOさんという方らしいです。元記事にはフルネームで載ってます。顔写真まで載せられてます。可哀そうに…。
しかし、まさかあの Y's Road の方が路側帯について誤った知識を持っているとは思いたくないですよね。
その辺のところ、記事本文を読んでみると何となく推察されるものがあります。
”6~7年前に変わった”のが”新常識”と言えるかどうか?(笑)…まあ、それは置いといて…。
果たしてこれが本当に、完全に間違ってる見出し「車道走行は左側の路側帯を走る」…の本文かと二度見してしまうほど、本文の方はセーフな内容になっているように思います。
このことから、このような記事が出来上がってしまった背景を、私は次のように推測します。
Y's Road のOさんは正しい知識で取材に答えたけれど、取材を行った記者Kさんは残念ながらこの点に関する道路交通法に関する知識と理解に乏しく、Oさんの回答を正しく理解することができなかった。
そして、この記者Kさんは、記事本文はOさんの回答文書をそのままコピペして記事を書き、見出しだけ自分で考えたため、こんなトンチンカンな事態が発生した。
…どうでしょうかね? もしこれが正しいとしたら、それは Y's Road さんとOさんに大変失礼なことになっていると思いますので、Forbes JAPAN さんと担当記者のKさんは記事を訂正すると同時に、Y's Road さん、Oさんに謝罪した方が良いと思いますけど?*2
結語:
おそらく自動車運転免許を持っていて自動車運転に関しては日常的に問題なく過ごしている方であっても、このような自動車運転では意識しないような事項に関しては、十分に理解できていなかったり、誤った認識を持っている方が少なからずいると思うのです。
たとえば、私が暮らす地域には路面電車がありませんから、路面電車に関わる道路交通法に関して、私は正しい知識と技能を持っている自信がありません。人間だれしも万能ではありませんから、それは仕方のないことだと私は思っております。
しかし、今回の Forbes JAPAN のように、大きな看板の元に広く情報を広める立場にある方々には、少なくとも正しい知識をもって情報発信していただきたいと切に願う次第です。特にこの「路側帯」に関する話は、私などでもちょっと調べればわかることなのですから。