安全なグループライドのために
先日、とあるグループライドに参加したとき事故があり、グループの仲間の一人が病院に運ばれる事態となりました。幸いにして大事に至ることはなかったようで、そういう意味では安心したのですが、今後のグループライドのあり方には色々と思うところがあったものですから、ちょっとこの記事を書いてみようと思ったわけであります。
何より最も私が危惧しているのは、現在、ネットや巷に流布されているこの種の情報はロードバイクに関するものばかりで、しかも、レースの真似事を推奨するような内容のものが非常に多いことです。一般のサイクリストのグループライドは、レースの真似事とは違うはずだと思うのです。
■もくじ:
安全なグループライドのために:
道路交通に関する法令を熟知して遵守すること:
何よりも、まずはこれでしょう。自動車に警笛を鳴らされるような状況はマズイ…という認識が必要だと思うのです。「個人個人の安全のために必須」という面も当然ありますし、同時に「グループとしての社会的名誉のために必須」という面もあると思うのです。交通ルール違反を繰り返しているような団体は、当然、社会的評価が下がりますよね。
以下に、個別に詳細に挙げてみたいと思います。
並走禁止:
グループで走っていると、ついつい仲の良い間柄でおしゃべりしながら走りたくなる気持ちは、私にもわかります。しかし、道路が狭い日本のこと、一般道路上での自転車の並走は他の交通者の邪魔になりますし、法令で禁止されています。「自動車が来たら左に寄ればいいよね」…なんて甘く考えている方もいるように見受けますが、そういうことではダメだと思うのです。
私の身近な例で申しますと、初心者の方よりもベテランの方の方が、この並走禁止を甘く見ているように思えます。ある種の自己過信があるように思えてなりません。
グループライドにおける安全な二段階右折:
まず、そもそも二段階右折を正しく理解されていますか? 自信がない方は、下のリンク先の記事などで勉強しましょう。自分は大丈夫…と自信のある方も、念のため、下のリンクなどで勉強しましょう。「自分は大丈夫」と思い込んでいる方が一番危ないのですから。
さて、二段階右折が分かったところで、”グループライド”における”安全な”二段階右折について考えてみましょう。
グループと申しましても3人くらいなら問題はないでしょう。しかし、これが10人くらいになったら…? 狭い交差点で、右折先の信号待ちで、10台の自転車が交差点内や横断歩道付近に滞留すると…、当然、他の交通者の邪魔になる可能性があると思うのです。では、どうしたら良いでしょう?
私の個人的見解になりますが、そのような場合、歩道があるならば自転車を降りて歩行者として歩道を押し歩きするということも、検討すべきと思っております。交差点から十分に離れたところまで来たら、安全確認の上で車道に出てライドを再開した方が良いと思うのですが、いかがですか?
十分な車間距離の確保:
前走者を風よけにして、ドラフティングで効率よくライド。気持ちは分かります。実際に効果があることも知っています。しかし、十分な車間距離を確保しないことのリスクを負ってまで、求めるべき効率ですか?
整備され閉鎖され安全が確保されたレースコースという環境内において、熟達した選手が(それでもリスク覚悟の上で)やっている行為を、凸凹だらけの上に自動車やオートバイや歩行者など予測不能の他の交通者が当然にいる一般公道で、素人が真似すること。その莫大なリスクをあなたは過小評価してはいませんか?
貴方の前を走っているのは熟達した選手などではなく、ただの運動不足のオッサン(失礼)なんですよ。そんな自転車の後ろにぴったりくっついて、恐ろしくないのでしょうか? その神経が私には理解できません。貴方の前を走る運動不足のオッサン(また失礼)は、いきなり転倒するかもしれませんし、不意に急ブレーキをかけるかもしれませんし、何をしでかしてくれるか分かりません。整備不良で後輪ホイールが走行中に外れることだって、あり得ます。そしてその時、その後方にピッタリ付いていた貴方は死を覚悟せねばなりません。そんな運動不足のオッサン(またまた失礼)に自分の命を預けるなど、正気の沙汰ではないと私には思えるのですが?
素人の一般公道グループライドで、ドラフティングなんてやめましょう。他にも、ローテーション(走行中の先頭交代)など、レースの真似事は同様の危険をはらんでいると思います。素人の公道ツーリングでは、やめておきましょう。
前走車の真後ろを走らない:
これは私が個人的に注意していることですが、前走車の真後ろではなく、前走車に対して30cm程度オフセットした位置を走るようにしています。理由は、前方路面状況の早期把握のためです。30cm程度であれば通常の走行における振れ幅の範囲内ですから、道路中央にはみ出して他の交通者の邪魔になるということもありません。
グループライドであっても、なるべく早く前方の路面状況を把握し、ひび割れや穴などを回避する運動を早めにとることは、安全に資すると私は考えます。前を走る運動不足のオッサン(まだ言うか)の尻など見ていても、何も楽しくありません。視界は前方の路面を早期に確認するためになるべく広く確保したいですよね。30cmオフセットするだけで、視界はかなり違ってきます。
パッキング:
ここでいうパッキングとは、全体グループを複数の小班編成にすることを指します。例えば10人でグループライドする場合、10台の自転車がずらずらと列を作って走っていては、自動車で追い越すこともままならず、邪魔になりかねません。イライラした自動車は無理な追い越しをかけてくるかもしれませんし、事故に巻き込まれる可能性だってあります。
そこで3~4台程度の小班編成に分け、この小班ごとに50m程度の距離をとれば、このようなことは軽減できるのではないでしょうか。
他の交通者が安全に通行できる環境の創出に協力することが、巡り巡って自分たちの安全にもなると私は思います。
本当にビンディングペダルは必要か:
スポーツサイクル、特にロードバイクといえば、ビンディングペダルが常識のようになってしまっています。しかし、確実に言えることは、ビンディングペダルは事故発生リスクを高めると同時に、事故発生時の被害を大きくします。この2点は異論なく確実に指摘することができます。グループライドであるならば、猶更です。
今、この記事を読んでいる貴方にお尋ねします。貴方は本当にビンディングペダルを使いこなせていますか? ただのお飾り、ファッションアイテムになってはいませんか? 肉体を極限まで鍛えた人間が、更にレースで勝つためにリスク覚悟でビンディングペダルを使うのは、私にも理解できます。しかし、貴方の場合はビンディングペダルを使うよりも、そのぷよぷよの脂身をどうにかすることの方が先なんじゃないでしょうか。貴方は趣味のツーリングでいったい何と戦っているのですか?(笑)
私はサイクリングが好きですが、命をかけているわけではありません。心身の健康のためのサイクリングで怪我したり、更には死んでしまっては、本末転倒どころではありません。だから私は、事故リスクを少しでも低減したいですし、もしも不幸にして事故となった時にも被害を少しでも軽減したい。当然、ビンディングペダルは使いません。
結語:
どのように走ることが安全なのか。状況は常に変化しており同じではありませんから、その状況に臨機応変に対応することが最も安全につながることだと思います。ですから、時にはルールをあえて破って行動することも、必要なことがあるでしょう。
しかし、そのためには何が安全なのかを事前に良く理解しておく必要があります。しっかり理解していればこそ、緊急の事態に超法規的措置で対応することもできるのです。ですから、まずは普段のライドの時から、何気ない日常の中から、安全な交通とはどういうものなのか、しっかり考えて準備しておくことが必要なのではないでしょうか。
安全を脅かす何よりタチの悪い敵は、自分の心の中にある慢心・過信であろうと思う私であります。