kirdina’s(裏)自転車秘密工房

「ordinaM3を買ってみたブログ」の作者による秘密の自転車工房です。濃い部分だけ抽出してみました。

【BOMBTRACK】ARISE の誕生から2021モデルまでの歴史を簡単にまとめてみた。~第一世代から第五世代に分類~

 2021モデルから新たな日本代理店のもとで日本への輸入が再開された BOMBTRACK。しかし、BOMBTRACK の歴史はもちろんそれ以前からあったわけでして、私の愛車でありおそらく現状の BOMBTRACK の主力製品であろう ARISE も、以前からあったわけなのです。

 

 そんなわけで、日本輸入再開を記念して(?)、ちょっと BOMBTRACK ARISE の変遷、歴史をまとめてみることにいたしました。 

 

■もくじ:

 

 

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私の愛車 BOMBTRACK ARISE 2 2018

 

  そんなわけで、私なりに大きな仕様変更を基準として、第一世代から第五世代に分類してみました。

 

 なお、フレームジオメトリについては、以前に別に記事にしたことがありますので、こちらもご参考にどうぞ。

kirdina.hatenablog.com

 

第一世代「誕生期」(2014~2015):

■主な特徴:

  • クロモリフレーム+クロモリフォーク
  • 正爪のリアエンド
  • ユニクラウンフォーク(2014のみ)
  • オリジナルデザインのフォーククラウン(2015から)
  • シングルスピード
  • ミニVブレーキ
  • アウトボードBB
  • 700Cホイール

2014カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2014/

2015カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2015/

 

 2014年、クロモリ、シングルスピードの、シクロクロスバイク、グラベルバイク、オールロードバイクとして誕生した ARISE。もともとピストバイクとBMXのブランドだった BOMBTRACK にとって、全く新しいグラベル分野への挑戦だったものと思われます。2014カタログでは、ピストバイクの SCRIPT、街乗り固定ギアバイクの DEVIDE の次に、2015カタログでは、ピストバイクのSCRIPT、NEEDLE、そして2015初登場のグラベルバイク HOOK の次にラインナップされています。

 

 そんな ARISE 第一世代は、日本語情報があまりに少なく、カタログや写真などからの推測に基づく部分もあることをご容赦いただくとして…、ピストバイクの特徴を色濃く残したバイクのようです。リアエンドのOLDは130mm。シングルスピード用のカセットハブを採用。ダボ穴は非常に少なく、まだ多用途性とは無縁。2014モデルではリアディレイラーハンガーすら無いので多段変速化は考慮外(2015モデルではリアディレイラーハンガーあり)。

 立ったヘッドチューブ角(73度)、立ったシートチューブ角(73.5度)、高いBB位置(BBドロップ40mm(2014)、50mm(2015))といったピストバイク的な尖った個性的な味付けのバイクとなっているのは、ピストバイクブランドたる BOMBTRACK ならではの特徴でしょう。

 

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BOMBTRACK ARISE 2014

 

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BOMBTRACK ARISE 2015 Orange

 

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BOMBTRACK ARISE 2015 Black


 

 

第二世代「進歩期」(2016):

■前世代からの主な変更点:

  • スライディングドロップアウト
  • サイドハグ式ヤグラのシートポスト
  • プレスフィットBB

2016カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2016/

 

 正爪リアエンドだった前世代から、スライディングドロップアウトに変更になった第二世代 ARISE。カタログでは、ピストバイクの SCRIPT、NEEDLE の次に掲載。なお、この年から TEMPEST、BEYOND などが登場し、HOOK の種類が増えております。

 そんな第二世代 ARISE ですが、BB位置は徐々に下がって(BBドロップ55mm)きたものの、立ったヘッドチューブ角(73.2度(Mサイズ))、立ったシートチューブ角(73.5度)は依然として尖った個性的な味付け

 

 このあたりの世代の BOMBTRACK ARISE の性格をよく表していると思う動画が、こちら。SSCX として複数の ARISE が登場しますよ。

 


BOMBTRACK AT THE "SSCX EC 2016"

 

 動画をご覧いただければわかるとおり、このあたりの世代の BOMBTRACK ARISE は割と純粋なシングルスピードシクロクロスバイク(SSCX)なんですね、たぶん。

 しかしながら、フロントフォークにミッドブレードアイレットが追加されるなど、一方で徐々に多用途性にも意識し始めたように見える第二世代でありました。

 

 ARISE 2016 については、こちらに詳しい記事があります。

karaido.exblog.jp

 

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BOMBTRACK ARISE 2016

 

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BOMBTRACK ARISE 2016

 

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BOMBTRACK ARISE 2016

 

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BOMBTRACK ARISE 2016

 

 なお、いつから BOMBTRACK ARISE の日本正規流通が始まったのかについては情報調査中なのですけど、少なくともこの2016モデルは、当時の輸入代理店(w-line distribution?)のもとで日本市場への正規流通があったことは間違いないでしょう

 

www.w-linedistro.com

 

 

 

第三世代「発展期」(2017~2019):

■前世代からの主な変更点:

  • 車種の増加
  • 機械式ディスクブレーキ(ARISE 1 はVブレーキ・ARISE GEARED 2019 は油圧式ディスクブレーキ
  • ナローワイドチェーンリング(ARISE 2 2018から)
  • SHIMANO 11S フリーボディー+シングルコグ、スペーサー
  • アウトボードBB
  • チューブレスレディー対応(2019から)

2017カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2017/

2018カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2018/

2019カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2019/

 

 2017カタログでは、ピストバイクの SCRIPT、NEEDLE の次という位置づけは変わらず。しかし、2018カタログからはトップに躍り出た ARISE。BOMBTRACK の大きな方針転換が見て取れるカタログの変化。なお、BMXは2017カタログから消え、ピストバイクについては、2018カタログから SCRIPT が消え、NEEDLE のみとなりました。

 そしてこの変化に伴い、ARISE はディスクブレーキを採用(ARISE 1 を除く)して第三世代となり、大きな発展の始まりとなったと思われます。

 

 まず、ARISE の種類が多様化

 2017モデルでは、ARISE の他に、内装変速ハブを採用した ARISE GEARED が登場。

 2018モデルでは、第一世代に先祖返りした ARISE 1、順当進化の ARISE 2、内装変速ハブの ARISE GEARED、ツーリング特化でフェンダー・キャリアフル装備にハブダイナモに加え外装3x10速の ARISE TOUR と、更に種類が増えました。

 2019モデルでは、ARISE 1、ARISE 2 は同様。ARISE GEARED は油圧ディスクブレーキに外装1x10速、ARISE TOUR はフェンダー・キャリアフル装備、ハブダイナモ、外装2x10速。

 前世代から多用途性を意識し始めたと思われる ARISE。しかし、実際にユーザーのニーズはどこにあるのか。そんな試験的な意味合いもあるのではないかと感じさせるラインナップに見えるのではないでしょうか。

 

 業界の時流を取り入れ、ディスクブレーキを採用した第三世代。これに伴い、ARISE 2 は従前のシングルカセットフリーボディーが SHIMANO 11S カセットフリーボディーになり、これにシングルコグとスペーサーを入れてシングルスピードとする仕様に。また、リアエンドのOLDは135mmに変更。

 

 また、多用途性を促進する意味が大きかったと思われるのが、ARISE 2 に 2018 モデルから採用されたナローワイドチェーンリング。これで流行の1x化が容易になりました。またプレスフィットBBをやめてアウトボード式BBになったことで、ユーザーが自分でメンテナンス、カスタムをしやすくなりました。

 更に、2019モデル ARISE 2 からはダウンチューブ下にもダボ穴が増え、こちらも流行のバイクパッキングを意識した進化がなされております。

 

 ジオメトリについても、以前の尖った味付けからより一般的なものに変わっていきました。これは「遊ぶためのバイク」から「多用途万能バイク」への進化と考えて良いのではないかと思います。

 ヘッドチューブ角(71度)、シートチューブ角(73度)、BBドロップ(65mm)、ともに一般的な数値に近づいていきました。

 

 その一方で、特徴的なサイドハグ方式ヤグラのシートポストは、2019モデルからは普通のよくあるタイプに変更されるなど、微妙なところでコスト削減も図られ始めたように感じます。

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2017 Metallic Gold

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2017 Matt Black

 

 ARISE 2 2017 については、こちらに詳しい記事があります。

karaido.exblog.jp

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2018 Metallic Gold

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2018 Black

 

 ちなみに私の愛車は、上の写真の BOMBTRACK ARISE 2 2018 Black。サイドハグ方式のシートポストヤグラがオレンジ色なのが特徴。

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2019 Prismatic Blue

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2019 Black


 

 

第四世代「完成期」(2020):

■前世代からの主な変更点:

  • スルーアクスルを採用(ARISE 1 を除く)

2020カタログ:https://bombtrack.com/catalogue-2020/

 

 代理店交代のゴタゴタのせいで日本に正規輸入が無かった 2020モデル。しかし、この2020モデルが ARISE の完成期なのではないかと考えている私です。

 カタログ上の位置づけは最前列トップ。

 ARISE 1 は従前のとおり。ARISE 2 はダボ穴が更に増え、荷物積載を意識した進化。ARISE GEARED、ARISE TOUR も従前の特徴を維持。ジオメトリの点でも前世代から大きな変更はありません。

 そんなわけで、ここに BOMBTRACK ARISE の完成形を見た思いがいたします。総合的に見ると、この2020モデルが一番良かったと私は思います。つくづく、日本への正規流通が無かったのが残念です。

 

 余談ですが、私個人としては、2020モデルの Glossy Orange Fade の色が好きです。フレームカラーも2020モデルが一番良いんですよね。

 

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BOMBTRACK ARISE 2 2020 Glossy Orange Fade

  

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BOMBTRACK ARISE 2 2020 Glossy Metallic Teal

 

 

第五世代「成熟期」(2021~):

■前世代からの主な変更点:

  • フレーム共通化
  • フレームサイズ展開の見直しと拡大
  • 小さいサイズのフレームには650Bホイール

2021カタログ:https://bombtrack.com/2021-catalogue/

 

 というわけで前世代で完成した ARISE なのですけど、発展の後に待っているのは再編…というのは世の習わし? 無駄な枝葉を切り詰めるのは、大切な部分を育てたいから。そういう意味では成熟の時代。日本への正規流通は、新代理店 RITEWAY のもとで再開。

 

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BOMBTRACK ARISE 2021 Glossy Metallic Black

 

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BOMBTRACK ARISE 2021 Glossy Pearl Blue

 

 2021カタログでも最前列トップという位置づけは変わらない ARISE 。しかし、先祖返りの ARISE 1 は廃止。これに伴い、前世代の ARISE 2 の正当後継機が新「ARISE」となりました。他に ARISE GEARED、ARISE TOUR というラインナップに変更はないのですけど、大きく変わったのは、実はフレームなのです。

 

 この点に関しては、下の記事に詳しく書いたのですけど…、

 

kirdina.hatenablog.com

 

 要するに、ARISE 全車種でフレーム共通化が実施されたようです。

 これにより、ARISE に予備スポークホルダーが付いたり、ARISE TOUR がスライディングドロップアウトになったり、色々と変なこと(?)が起こりました。ARISE のホイールベースも ARISE TOUR に寄せて前世代より長くなりました(1019mmから1045mmへ)。

 具体的には、ヘッドチューブ角(70.5度)、シートチューブ角(73度)、BBドロップ(70mm)…といった感じ。BBはどんどん下がっていくなぁ。第一世代の2014モデルではBBドロップ40mmだったんですよ?

 

 これが良いことなのか、どうなのか。それは分かりません。カタログ上からはピストバイクが完全に消えた2021。一方で、この数年で新車種が続々登場しておりますので、BOMBTRACK にとってグラベルバイク、オールロードバイクの草分け先鋒役を果たした ARISE はそろそろその使命を終えようとしているのかもしれませんね。カタログトップの座もいずれは HOOK や BEYOND に明け渡すことになるのかな。

 

kirdina.hatenablog.com

 

 

結語:

 こんな感じで、BOMBTRACK ARISE の変遷を私なりにまとめてみました。

 私個人は、BOMBTRACK ARISE 2 2018 モデルを所有し、現在も愛用しているのですけど、この発展期ど真ん中のモデルを購入できたのは割と幸運だったと思っております。スルーアクスルじゃないのが残念ではあるのですが、ジオメトリ的にはまだピストバイクブランドとしての BOMBTRACK の味をほんのり残しており、特徴的なサイドハグ方式ヤグラのシートポストもありますし、ナローワイドチェーンリングも標準装備。今後も末永く愛用できそうです。

 

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私の愛車 BOMBTRACK ARISE 2 2018

 

 最後に、中古市場なども含めて今から BOMBTRACK ARISE の購入を検討するのであれば、私としては、プレイバイク的にヤンチャに遊び倒すなら誕生まもない野心的な2015モデルツーリングや街乗りなども含めて多用途に使いたいなら完成形の2020モデルをお勧めしておきます。2020モデルの次が2018モデルでしょうかね。2017モデルと2019モデルはちょっと中途半端な感じがあるのです。個人的には、もし2015モデルを入手できる機会があるなら、是非欲しいです。まあ、現実にはほぼ2021モデルしか手に入らない気がしますけどね。でも、2021モデルはフレーム共通化の影響で、従来世代に比べると少々没個性な、良く言えば普通の…悪く言っても普通の…そんなバイクになってしまった感がいたします。

 ですけど、2021モデルも「頑丈な多用途万能機」としての BOMBTRACK ARISE の価値は全く損なわれてはおりませんので、そういうのが欲しいという私のような方には、検討の価値は十分にあると思いますよ。